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第58話 それぞれの選択

Penulis: 天咲琴乃
last update Tanggal publikasi: 2026-09-23 14:32:32

 四本目のカセットを再生すると、最初に聞こえてきたのは、懐かしい笑い声だった。

『巌、そこ違う!』

『うるせえ。分かってる!』

『分かってないから言ってるんでしょうが!』

 すみえの声。

 続いて、理人が笑う。

『二人とも、客が起きるぞ』

『お前も手伝え!』

『はいはい』

 いのりは思わず笑った。

「……本当に、仲良しだったんだね」

 録音の中では、食器が触れ合い、誰かが椅子を引いている。まるで三人が今も食堂で朝食の準備をしているようだった。

 やがて音が途切れ、年を重ねた理人の声に変わった。

『いのり。ここからは、俺たちが選んだ人生の話だ』

 カサリ。

 紙をめくる音がした。

『最初は、葉月さん』

 いのりは姿勢を正した。

『葉月さんは、二〇五四年へ帰った。あの人が元いた時間だ』

 未来へ帰る直前、葉月は巌に尋ねたという。

『私がいなくても、幸せになれる?』

 巌は答えた。

『分からねえ。でも、幸せになる努力はする』

 葉月は泣きながら笑った。

『じゃあ、私もそうする』

 二人は抱き合わなかった。

 最後まで、互いの手を握っていた。

『あの二人は、一緒になることだけが愛じゃないって
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